建築×音楽の交差点

(2018/06/05)
今回は、建築と音楽に関係する、歴史上のできごとをご紹介したいと思います。


イタリア ヴェネチアに、サン・マルコ寺院という教会があります。
世界遺産にも登録されている、歴史ある教会です。

この場所がとても興味深いのは、建築史と音楽史が見事に交差した例だからです。

サン・マルコ寺院は、9世紀初期、ベネチアの商人がエジプトのアレキサンドリアから持ち帰った福音記者 聖マルコの亡骸を祀るために建設されました。

建築様式としては、東ローマ帝国のビザンティン様式で建立されています。
5つの大きなドームや巨大なバシリカ、モザイク壁画が特徴です。
その後時を経て改築されたため、ロマネスク様式やゴシック様式など様々な時代の建築様式を融合した建築物となりました。

サン・マルコ寺院に、1527年に楽長として就任したのが、アドリアン・ヴィラールト(1490頃-1562)でした。


このサン・マルコ寺院の聖堂は、ギリシャ十字型と呼ばれる、平面が十字形の構造をした大きな聖堂です。

そして聖堂に聖歌隊を配置する際に、十字の対極に向かい合わせで聖歌隊を配置し歌わせたところ、音響効果でいうところの「ディレイ効果」(やまびこのような効果)が発生しました。

この音の現象に「面白い!」と着目したヴィラールトは、交唱様式と呼ばれる、合唱隊を2つに分けて交互に歌わせる音楽様式を発展させたのです。

この二重合唱の音楽様式を、コーリ・スペッツァーティと呼びます。
イタリア語で「分けられた合唱隊」の意味です。



ヴィラールトとその弟子や後継者の音楽は、ヴェネツィア楽派と呼ばれました。
またこの時代、サン・マルコ寺院のすばらしいステレオ音響効果に倣って、二重合唱の音楽様式が他のたくさんの聖堂でも採用されました。

その後コーリ・スペッツァーティは、次第にコンチェルタート様式(協奏曲)へと発展し、西洋音楽の歴史はルネサンス音楽からバロック音楽へと移行していったのです。

どうでしょう!
求める音楽をするための空間を作る、のではなく、建築(=音響効果)から音楽が発展したのです。

もちろん、西洋音楽において、美術、建築、音楽の潮流は一体でありました。

しかし、この出来事ほど音楽と建築の密接なかかわりを感じさせるできごとはないのではないでしょうか。

建築×音楽の交差点 ともいうべき西洋建築と音楽の歴史について、ご紹介いたしました。
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