防音スタジオ 野中“まさ”雄一さん

  • 野中“まさ”雄一さん
  • 施工種別:  ボーカル・声楽
  • 建物タイプ: レコーディングスタジオ
  • AKBの作曲やアレンジで有名な、野中“まさ”雄一さんは、2014年春、 自宅新築時に自前のスタジオを併設した。夜間の録音作業になることも多く、閑静な住宅地であるだけに防音性能にはこだわったという野中さんのスタジオに訪問し、お話を伺った。
  • Q1:完成したスタジオの紹介
    完成したスタジオの紹介
    ―今日は野中“まさ”雄一さん(以下、野中さん)が環境スペースで造られた防音スタジオについてお話を伺いたいと思います。最初に野中さんのお仕事を教えてください。

    作曲の仕事、編曲の仕事、そして演奏者です。 作曲・編曲は、AKBの曲で知っていただくようになりましたが、劇伴(ゲキバン)と言って、テレビ番組や映画などにBGMをつける仕事やゲーム音楽などの作曲・編曲も数多く行っています。

    【防音スタジオ】モニターに映したボーカルブースと、細かいやり取りを行いながら録音ができる
    完成したスタジオの紹介
    ―できあがった防音スタジオはどのようなスタジオですか?

    作成したスタジオは、ボーカルブースとコントロールルームの2部屋で構成されています。家が2013年暮れに完成し、その後、2014年1月に防音工事を開始し、完成したのが2月の終わりでした。

    ようやく念願だった自分のスタジオが持てました。しかも、細部に至るまで要望通りに製作してもらって、大変満足しています。 内部のカラーは茶とアイボリーで統一しました。

    (写真右上)右ドア:ボーカルブース 中ドア:玄関 左ドア:階段下の物入れへ続くドア。すべて二重ドアで音漏れを防いでいる
    (写真右下)スタジオ右奥の壁には吸音パネルを設置
    (写真左上)録音ブース内 譜面台の上にモニターを設置 床は琉球畳
    (写真左下)スタジオの机の下に置かれたミキサー類
  • Q2:アレンジャー(編曲家)という仕事について
    ―ところで、アレンジ(編曲)というのは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

    AKBの場合は、最初に曲のコンペがあります。そこで選ばれた曲の仮歌が入ったデモテープを聞いて、プロデューサーの秋元さん、ディレクターさん、私の3人で方向性を話し合います。

    例えば、「今回はバラードでいきたい」となれば、メロディが気に入って採用した曲がアップテンポであった場合には、それをバラードな曲にしたり、「いやいや、元気な卒業ソングにしようよ」と決まれば、そのような方向でアレンジを加えるという作業です。

    アレンジの仕事というのは、抽象的なイメージを出し合うところからスタートし、依頼者がなにを望んでいるのか探りながら、実際の音に変えていく作業です。依頼者が抱くイメージに合わせる為には楽器はギターがいいだろうか、ドラムがいいかなどと楽器の構成も考えます。

    イントロをつくるのもアレンジャーの仕事ですから、元の曲に近いイメージのイントロにしたり、この曲のイントロは派手にしようと考えたり、そのように全体の曲をつくって、「どうでしょうか」と提案する仕事です。
    ―劇伴(ゲキバン)というのはどんな仕事ですか?

    例えばわかりやすいところでは、NHKのきょうの料理のBGMをつけています。 中華料理であれば中華に合う曲、イタリアンだったらイタリアを連想するような明るい曲とか、料理によって曲調を変えていきます。料理番組の劇伴は今回始めてでしたが、料理番組は方向性がわかりやすいので、楽しいですね。そのときの料理に合った楽器を考えて、人に頼んだり、自分が演奏したりしています。

    ―生の音を使うんですか?

    最近はコンピューター音楽もかなり生の音に近くなってきましたが、私は生音の方が好きなので、なるべく生音を使うようにしています。 自分で演奏した音や、人に依頼して演奏してもらった音をインターネット経由で集めて作るなど、最近は会わないで済んでしまうことも多くなってきました。
  • Q3:防音スタジオができるまで~スタジオをつくる前はどうしていたか
    ―そのようなお仕事であればスタジオは大切なものなんですね。ご自分のスタジオができる前はどうしていましたか?

    以前は自宅を兼ねた仕事部屋で録音していました。片方の壁をグラスウールで簡易に防音しただけの普通の部屋です。マイクも私の作業している脇に立てて、ヘッドホンもなしという状態でした。
    ―そのときにはどんな問題がありましたか?

    昼間であれば、外の音が録音に入ってしまうことが多いです。救急車が通ってしまったらダメになってしまうし、子供の遊び声も入ります。音質も悪かったですね。さまざまな反響音がありますし、パソコンの音や自分の息も録音に混じってしまいます。そんなわけで、自宅作業では仮歌が多く、本番では外部スタジオを使用していました。

    ※仮歌:
    曲が先にできたとき、作詞家に曲を渡すときにイメージがわきやすいように曲に合わせて「ラララ」で歌ったものなどを仮歌という。作詞ができたときも、仮歌を受取り、再度の修正を行ったりする。最終的にできあがった曲も仮歌を歌手に聞いてもらって覚えてもらうことも多い。「仮歌士」という職業がある。

    ―防音されていない環境のときは、外からの苦情とか、締め切り近くは夜間の作業もおありだったと思いますが、どう工夫していましたか?

    幸いなことに苦情はありませんでした。家の片側にだけはグラスウールを入れていましたが、大した防音効果はなかったと思います。ただ、子供の頃から住んでいたところでしたから、ご近所の方は私が音楽の仕事をしていることをよく理解してくださっていました。また、私の方でもご迷惑をおかけしてしまうことをあらかじめお詫びしてもいて、そのような人間関係がある中で仕事をしていました。

    しかし、引っ越しをして新しい環境の中で仕事をしていくことになり、防音スタジオの必要性が出てきました。まずは住まいさがしから始めることにしました。
  • Q4:防音スタジオができるまで~マンションか一戸建てか
    ―そうすると、防音工事を前提にした家探しだったわけですが、どのように探しましたか?

    最初は、防音マンションなど最初から防音されている部屋を探しました。しかし、防音されているかのようなうたい文句であっても、よく読むと二重サッシが入っているだけで防音されているわけではなかったり、希望とはかけ離れていることがわかりました。

    そこで次に、安めのマンションを買って、防音工事を施そうと考えました。しかし、マンションをリノベーションするプランは意外に費用が嵩むことがわかり、そのように手探り状態で探しているうちに、マンションと一戸建てでは価格に大きな違いがないことに気づきました。

    一戸建てにして、玄関からすぐに入れる位置にスタジオを造れたなら、夜中に歌手が歌いに来たとしても、家族の手を煩わせずにすみます。だったら、一戸建てにしようとなって、1階にスタジオが作れる間取りを条件に探しました。

    ですが、これが意外になくて。この家に出会うまで、探し始めてから1年ほどかかってしまいました。一戸建てに絞り込んだ頃から防音室工事を依頼する業者も探し始めました。
  • Q5:防音スタジオができるまで~製作業者はどのように探したか
    ―業者はどのように探しましたか?

    人の紹介です。
    私も仕事で貸しスタジオを含め、たくさんのスタジオを使用してきましたので、スタジオと言っても名ばかりのところも少なくないことを知っていました。 エレベーターのノイズが入ってきたり、防音性能が低かったり、というスタジオがあたりまえにあるんです。限りのある予算で、望む防音性能が出せる工事業者をどうやって探したらいいのか、頭をかかえました。

    そこで、私よりもっとスタジオを利用する機会の多い人に相談しようと思って、 音楽の各楽器や歌のバランスを調整してくれるミキシングエンジニアという職種の人に、「防音業者でいいところを知りませんか」と相談してみました。

    環境スペースを含めて3社を紹介してもらいました。 早速3社を訪ねて、こちらの望む性能や予算を伝えて、相談しました。
  • Q6:製作業者に環境スペースを選んだ理由~こちらの希望をくみ取ってくれるかどうか
    製作業者に環境スペースを選んだ理由~こちらの希望をくみ取ってくれるかどうか
    ―3社の中で環境スペースを選んだ理由はなんでしょうか?

    紹介してくれた人からは、「環境スペースがつくったスタジオはしっかりしているよ」と聞いてはいたのですが、実際に環境スペースの営業の小野口さんと話してみて、「頼むのはここしかない」と感じました。

    他の2社は、「防音室とはこういうものなので、この家を防音するとしたらこうなります」という一方的な提案だったのに対して、環境スペースは、私がどういう仕事をしていて、どういうスタジオができたら一番良いのかということ考えた提案でした。

    実際に前の家に来て、「どんな音を出していますか」「どういういう仕事がメインですか」という事前調査をした上で、「これでしたらより使いやすいのでは」と設計図を出してきてくれました。 その結果、同じ予算で依頼したものに対しての提案に、びっくりするほどの開きがありました。
    製作業者に環境スペースを選んだ理由~こちらの希望をくみ取ってくれるかどうか
    例えば、ある業者の提案では居住スペースとの間のドアが1枚でしたが、環境スペースは同じ場所を二重ドアで提案してくれました。 家人にも聞こえないようにしてほしいという依頼はしていませんでしたが、夜中でも仕事ができるように家族に対しても防音された提案をしてくれたわけです。これは一例ではありますが、家族のことも考えてくれている会社であるということです。


    それから、防音工事をすると天井が低くなるのですが、床を削って高さを確保しましょうという提案をしてくれました。他の業者は「天井が低くなるのは仕方ないですね」という対応でした

    ―それではオーダーの意味がない?

    そうなんです。私には「こういうスタジオがほしい」という希望が実はたくさんあって、「こだわりが強いですね」と言われたほどです。しかし小野口さんは話しやすい方で、「こうしたいんですが」と要望を言ってみることができました。小野口さんは聞いた上で、だめなものはだめと言ってくれますし、できることは応えてくれました。そのようなリクエストに対応してくれたのが環境スペースだけだったということです
  • Q7:オーバースペックなくらいの防音室が出来上がった~環境スペースへの評価
    ―工事が始まってからできあがるまで、防音性能への心配はありましたか?

    まったくなかったです。工事に入るまでの間に綿密な打ち合わせをしていたので、この工事は必ず成功するという確信がありました。工事に入ってからはただただ完成を楽しみにしていました。

    ―できあがってみて、どうですか?

    外にはまったく聞こえないですね。音を鳴らした状態で、外に出て壁に耳をつけてみたりもしましたが、それでもまったく聞こえませんでした。大成功です。


    自前の防音室を持つのは夢のまた夢でした。
    元の部屋の広さ、予算などの限られた条件下で、望みうる最高の防音室をつくっていただきました。
    僕の現状ではオーバースペックなくらいです。
  • Q8:今後の期待
    ―これからの野中さんのお仕事のことや環境スペースへの要望があればお聞かせください。

    今後の仕事の面では、もう少し演奏の仕事を増やしたいです。1人で籠もってニタニタしながら音楽を作っているのも楽しいんですが、1万人くらい入る会場で、演奏をして、私が手を上げるとみんなも手を上げてくれるというのも楽しいです。

    この度は、環境スペースに高スペックの防音室をつくってもらって、大変有り難く思っています。これまでは音のことを気にしながら仕事をしていたので、全く気にしなくて良くなって、非常に楽になりました。

    防音って、ミュージシャンにとっては、憧れで、しかも知らない世界なので、工事中は毎日見に来ていました。楽しくて仕方なかったですね。

    私個人の考えですが、今後は私のように個人でスタジオを造りたい人が増えるような気がします。音楽をやっていなくても静かな家を求める人は増えるのではないでしょうか。
    昔は近所づきあいがあってこその町だったと思いますが、今はそうではなくなっているので。私の周りでも困っているミュージシャンは多いですし、レベルの差はあれ、防音したいという人は増えてくると思っています。

    私も、次にはもっと広い防音室をつくりたいと思っていますので、そのときは、またぜひよろしくお願いします。


    ※ 取材日時:2014年7月
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