能舞台の音響効果~緻密にしかけられた職人技のヒミツ | 防音室・防音工事は環境スペースにお任せ|サウンドゾーン

最近、古典芸能が注目を集めていると聞きます。

たしかに、若い方のあいだで落語の人気が再燃していたり、歌舞伎なども、以前に比べると気軽に見に行ける印象が強くなりましたね。

筆者が個人的に好きなのは「能」なんです。

それも、夏から秋にかけて行われることの多い「薪能(たきぎのう)」。

夜間、たきぎをたいて、屋外で行うのことです。

屋内での鑑賞もさることながら、パチパチと薪のはぜる音を聴きながら能を楽しむのも、風情があって良いものです。

歌舞伎は若い方にもメジャーだから何となくわかるんだけど、「」や「狂言」ってどんなもの?と思っている方、きっと多いのではないでしょうか。

簡単に例えてみますね。

能:お面を使った、古典を題材にした劇。ミュージカル。

狂言:コミカルな動きが特徴のお笑い劇。コント。



若い方は、「狂言」の方が親しみやすいかもしれませんね。

CMや映画でも活躍なさっている野村萬斎さんや、「そろりそろり」とモノマネされている和泉元彌さんなどは、狂言師の方です。

お茶の間でもすっかりおなじみですね。

この「」と「狂言」は、同じ舞台(ステージ)を使用して演じられるのですが、実は、この舞台にはさまざまな音響的「しかけ」が施されているのをご存じでしょうか。

本日は、能舞台の音響効果についてお話したいと思います。

能舞台の構造を、すごくおおざっぱに説明してみますね。

能舞台(出典:コトバンク)

本舞台※後述 は、約6メートル四方で、四隅に太い柱があり屋根を支えています。

三方は吹き抜けになっていて、正面奥だけ「鏡板(かがみいた)」という、松の描かれた板張りになっています。

また、本舞台からは、向かって左手の楽屋へ通じる廊下「橋懸かり(はしがかり)」が伸びています。

舞台に屋根があることからもわかるように、能舞台はもともと屋外に建てられていた舞台でした。

それが明治以降は、観客席を備えた建物の中に、それまでの舞台様式をそっくりそのまま移した入れ篭式の建物形式に変化していったのです。

能舞台平面図

四角い舞台は、役者が演じる場所で「本舞台(ほんぶたい)」と言います。

いわゆる、メインステージですね。

メインステージの向かって右側は「地謡座(じうたいざ)」と呼ばれ、「地謡(じうたい)」という、6~12人編成のコーラスグループがいる場所です。

また、メインステージの正面奥は「後座(あとざ)」と呼ばれる場所です。

ここには「囃子(はやし)」という、笛や太鼓などの楽隊、いわゆるバンドや、黒子的な役割をする「後見(こうけん)」などがいます。(余談ですが、人の後ろ盾になって世話をしたり面倒を見たりする人を指す「後見人」という言葉は、ここから来ているそうですよ。)

さてさて、能舞台を見て一番目立つであろう「鏡板」。

実はこれは、太鼓の音を響かせる反響板の役割を持っています。

屋根も同様で、本来の雨除けとしての役割の他に、屋根からひさし、鏡板までが、一連の反響板となっているのです。

そして、「見所(けんじょ)=観客席」 からはなかなか見ることはありませんが、本舞台や後座、橋懸かりの床下には、地面に数か所穴が掘られ、そこに直径1メートルほどの大きな甕(かめ)が

斜め上向きにいくつも置かれているのです。



これは音響効果をねらった工夫であり、向きも絶妙に角度がつけられています。

舞台上の演者が踏む足拍子などで発生する空気振動が甕の空洞の中に伝わり、いろいろな方向に反響することで、深みのある音を作りだすと言われています。

舞台によっては、土に埋められていたり、木枠を組んで据え置かれていたりと方法は様々ですが、拍子の音を客席で聞きながら位置や角度を調整していたそうで、非常に感覚的な職人技だったそうですよ。

音響学に詳しい方は「ヘルムホルツ共鳴器(共鳴体)」というものをご存じかと思います。

※ヘルムホルツ共鳴器とは(Wikipedia)

実はこの床下の甕も同じような原理で、舞台の音響条件を良くしていると言われています。

最近では、反響・共鳴の役割というよりは、甕が余分な周波数成分を吸収してくれる(不快な振動数の音を消す)ために良い音が得られる、という研究結果もあるようです。

ただ、いずれにしても能舞台は、音響的にとてもよく工夫された建造物で、舞台全体が楽器の役目を果たしていると言えるでしょう。

今まで狂言を観たことのなかった方も、今年はそんな音響効果に注目して「能デビュー」してみてはいかがでしょうか。

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