「1/fゆらぎ」ふたたび~焚き火を科学する秋の日
気づけばもう10月。
近頃では暑い夏を避け、涼しくなってくるこのシーズンにアウトドアを楽しむ方も増えていますね。
秋のアウトドアといえば人気のキャンプ。
秋キャンプの醍醐味といえば、何と言っても焚き火。
わざわざ海や山へ出かけなくても、都心にいながら音楽や食事、お酒と一緒に焚き火を楽しめるイベントも開催されたりしています。
焚き火を見ているとなんだか落ち着く、パチパチという音を聞いているだけで癒される、そんな方も多いのではないでしょうか。
今回は、>焚き火の「音」に注目してみましょう。
焚き火でリラックスできるのは1/fゆらぎがあるから
焚き火の持つヒーリング効果については、すでに多くのメディアで紹介されているので、ご存じの方もたくさんいらっしゃるでしょう。
焚き火の映像だけを流したTV番組がヒットしていたり、動画サイトも再生回数が軒並み多かったり。
焚き火には、以前ブログでもご紹介した「1/f(エフぶんのいち)ゆらぎ」と言われる、リラックス効果を与える成分が含まれています。
※2019年5月5日付ブログ 『夏の音、癒しの効果「1/fゆらぎ」』
一定のようでいて、実は予測できない不規則なゆらぎが、人間に心地よい快感を与えているそうです。
「1/fゆらぎ」は、木漏れ日、ホタルの光、炎の揺れなど視覚から得られるものもあれば、小川のせせらぐ音、波の音、小鳥のさえずり、そして焚き火の音など、聴覚から得られるものもあります。
ろうそくの炎だけでもじゅうぶん癒されますが、焚き火のようにパチパチとはぜる音が加わることで、より一層リラックス効果が高まるのだそうです。
音の正体を理解して、リラックスに活用する
ところで、あの「パチパチ」という音は何の音でしょうか。
木が燃える音?割れる音?
科学的な言い方をすると、あの音は「水蒸気爆発」の音です。
情緒ない(笑)
木に含まれる水分が炎によって急速に加熱されると「過熱水蒸気」になります。
※(「過熱水蒸気」=100℃以上に加熱された水蒸気のこと=スチームオーブンとも
そして、樹木が根から吸い上げた水分を茎や葉へ通す管のことを「導管(どうかん もしくは「道管」と表記)」と言います。
水分が過熱され、水蒸気が外に逃げる時に、この導管細胞中の空気と一緒に膨張して導管を破壊します。
これが「パチッ」という音の正体です。
焚き火に使う薪の材料は様々ですが、最もメジャーで入手しやすい楢(ナラ)の木は、この導管細胞が大きいので、「パチパチ」という音もよく鳴ると言われています。
ちなみに導管細胞の大きさが世界最大級と言われる栗(クリ)の木は、熱膨張で破裂する勢いも非常に強いのだそう。
燃やすと「パンッ!」という大きな音を立てて火の粉もまき散らすので、注意が必要なんだそうです。
一方、燃やした時に木口から「シューシュー」という音が聞こえたことはありませんか?
この音が聞こえた薪は、しっかり乾燥していない薪。
薪の中の水分が沸騰して外に出てきている、残念な音なのです。
このような薪は往々にして不完全燃焼を起こし、煙も多くなってしまいます。
切ってすぐの薪の水分含有量は約50%と言われています。
このままではなかなか燃えないので乾燥させなくてはなりません。
燃えやすい水分含有量(20%程度)になるまで、1年から2年ほどかかるのだそうです。
里山の家の壁に薪がびっしり並べられている風景を、目にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
天気の良い日にこの薪棚に近づくと、「ピチッ」という小さな音が聞こえることもあります。
これは薪が乾燥する時に出る音です。
乾燥した薪をよく見ると、木の芯から放射状にひび割れが入っています。
木は成長する時、外側から大きくなるため、外側に近い方が水分が多く、内側(中心)ほど水分が少ない状態です。
なので、乾燥する時は水分の多い表面側の方がたくさん縮もうとして、ひずみが生じて割れが入るのだそうです。
天気が良くて風が吹くような日には、「ピチピチピチ・・・」と乾いた良い音が聞こえるかもしれませんよ。
最近疲れていてちょっと癒されたいな、という時には、身近な音の癒し効果をうまく利用してみてはいかがでしょうか
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